とどいた。
Zoom #H6essential
32bitfloat初体験です。僕の手は比較的大きめだと思うけど、少しハンディに余るくらいのサイズ感 pic.twitter.com/5UoVTe4W82
— さとうたくや (@n_s_lab_tokyo) March 9, 2024
つい出来心で購入してしまいました。
Zoom H6essentialです。
公式サイトはこちらです。
https://zoomcorp.com/ja/jp/handheld-recorders/handheld-recorders/h6essential/
バンドマン・DTMユーザー視点で、
使ってみた感想とかをレビューしていきます。
先に結論・まとめ!
- ゲイン調整不要なレコーダーはバンドマンにこそ有用!!
- ドラム録音、バンドの簡易パラRecにめっちゃ使える!
- DTMやらないならH1essentialで十分。
- マルチチャンネルの生配信用途にはまだ32bitfloat対応アプリが足りない
H6Essentialの主な特徴
①ゲイン設定なしでの録音対応(≠オートゲイン)
こんかい「Essential」の名称でアップグレードした最大の変化点です。
従来のデータ記録方式は
16bitや24bit整数でのデータ記録方式で、今回は32bit浮動小数点(32bitfloat)での記録となります。
……といってもIT関連の開発者じゃないとあんまりわからない話だと思います。
これは単純に16から32に増えたよって話ではなく、どちらかというと「浮動小数点」を意味する”float”の方にこそ大きな意義があります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%AE%E5%8B%95%E5%B0%8F%E6%95%B0%E7%82%B9%E6%95%B0
と、いいつつ詳しい説明は省きますが
多少の制約はあるが、データとして実際に記録できる音量の幅がかなり広くなるのは事実です。
ガチで理解を深めるなら個人的には、エンジニアのNARUKIさんの以下の記事がおすすめです。
とはいうものの、
ゲイン設定はデジタルというよりアナログ回路領域やAD変換における効率においてのメリットが大きいため
32bitfloatで録音さえすれば、音割れしないという結論にはなりません。
H6については内部で32bitFloatで記録しているのはもちろんのこと、
ADコンバータを各chごとにハイゲインとローゲインの2系統用意したうえで、適宜データへの記録として適したデータを選択する設計となっています。
この2つの仕組みで
ゲイン設定不要で実用レベルの音量なら音割れせずにデータ化できるようなレコーダーとなっています。
ちなみにこれは余談だけど
H1 essentialにはデュアルADコンバータの記載はなく、耐圧は120dB、
H4 essentialの付属マイクにはデュアルADコンバータの記載はなく、耐圧は130dB、
H6 essentialは付属マイクにもデュアルADコンバータの記載があり、耐圧は135dB
地味にグレードで仕様をきっちり分けているあたり、
かなりきっちりいろんなところでコストカットしている製品な印象。
②単体で6ch同時録音
名前の通り、H6は6chマルチchレコーディングが可能です。
ただし、通常ではそのうち2chは本体に付属するマイクとなります。
本体に付属しているマイク2chは、別途外部入力端子に変更できるアダプターが後日発売されるようです。
マイク以外の4chはキャノンとフォンのコンボ端子で、大抵の接続ソースをそのまま接続できます。
なぜなら、ゲインセッティングがないから。
ただ、インピーダンスの関係でギターなどのハイインピーダンスの楽器をそのまま接続するのは推奨されていないようです。(音は録れる)
③USBオーディオインターフェース機能
32bitfloatでのUSBオーディオインターフェース機能を持ちます。
しかも、6chマルチトラック。
Lightningのアダプタ経由のiOSでも認識したので、iPadOSでも多分動くと思います。
6chで32bitfloatのオーディオインターフェースって、巷にそんなに売られてない気がします。
④単三電池駆動&USB給電
地味にこういうところ大事なんです。
専用バッテリーとかだといざという時に充電できてないとかで割を食うことになります。
単三電池なら、スーパーでもコンビニでも売ってるので、
気づいたタイミングで買い足せば、1日無駄にするみたいなことは防げます。
……まぁ、SDカード忘れたら1日無駄にするんですけどね。
操作性について
システムファイブさんのこの動画が非常に参考になりました。
ちょっと前説明長いので適当に飛ばしてみることをお勧めしますが。
上面のボタンは再生コントロールと各チャンネルのONOFF、ミキサー画面の切り替えとなっていて
その他の操作は全てサイドのダイアルと1ボタンに集約されています。
ぶっちゃけると使いにくいですw
最近の端末はほぼタッチパネル化の流れを汲んでいるので
H6というフラッグシップ機でもこの仕様なのは、なかなかに”削ぎ落としてる”感があります。
ただ、録音設定をそんなに頻繁に弄るわけでもなく、
あとでまた紹介しますが、
本体だけで6chMixを完遂させるのはあんまり音楽用途では厳しいので、
操作するのは録音前の設定と、簡易的な再生確認くらいなので、コレくらいの操作感でも我慢できます。
むしろ手袋などをしていても操作感は変わらないはずなので
フィールドワークを考えると合理的なのかもしれない。
あと、ボタンが全体的に安っぽい印象のぐにゃっとした操作感ですが
これはカチカチさせると操作音がマイクに乗りやすいからとのことです。
音質について
比較検証するだけの機材を持ち合わせていないので
あくまで個人の感想となります。
必要十分、といった感じだと思います。
もちろんミックスで色々処理はしてるけどセッティングはこんな感じ
ドラム:H6本体マイク(ステレオ)
ギターR:SENNHEISER e609
ギターL:Behringer b906
ベース:アンプ内蔵DI pic.twitter.com/xEz9v2RK4T— さとうたくや (@n_s_lab_tokyo) March 17, 2024
ミックスで色々処理していますが、
ドラムは本体マイクで録音したサウンドのみです。
セッティングの都合上、シンバルに近くなったので高域はきっちり潰してるのと
バスドラが聞こえづらかったので、かなり極端なコンプの設定をしていますが
逆にいうとセッティング次第で、聞こえる程度にはきちんと上から下まで録音できていたということです。
まあ、最近のZoomとかTASCAMとかのハンディレコーダーってどれも十分な音質なので
特筆すべきことはないと思います。
とにかく、ゲイン設定不要で音割れの心配がないというのは
ある意味では音質面のメリットとも言えるかもしれません。
ここがすごいよH6Essential!
6ch32bitFloatでのコスパ
おなじくZoomのフィールドレコーディング機材で
32bitfloat対応の6chとなると、F6で大体8万円くらいします。
ライバル機であるTASCAMのPotacaptureX8は6万円程度です。
そこでH6Essentialは、3.5万円とかなりコストカットしてきています。
僕みたいな「試しに32bitfloatで録りたい!!」というライト勢の心をガッチリキャッチです。
ゲイン調整不要の気軽さ
本当に、売り文句通りですが。
ゲイン調整が不要っていうのはかなりストレスレスです。
さっきのとおり、バンドの音源作りのプリプロ的な感じで
各パートがきっちり聞こえるレコーディングをしたいという目的で買ったんですが
めちゃくちゃビンゴです。
スタジオリハなどは時間貸しなので、セッティングとかは結構忙しくて
レコーディングだけしに行くなら他パートの準備と並行して進めればいいんですが
メンバーでのセルフとなると、自分のセッティングもしたうえでレコーディングの準備も必要になります。
マイクを立てて、ケーブルを繋いで……
全部接続できた!と思ったところで、普通なら各パートに協力してもらってゲインを取る必要があります。
これもなんだかんだで6chあれば3〜5分とかかかるんですが
ゲイン調整不要なので、とりあえずマイク繋げば設営完了です。
あとは録音ボタンを押すだけ。現実的な音量なら音割れはしないので、爆音バンドでもだいたい大丈夫です。
僕はギターのマイクをE609という、アンプの上からケーブルで吊り下げられるタイプのマイクを持参したので
ギターのマイキングは1分で終わります。
ベースはアンプ内蔵のDIから。ドラムはH6をマイクスタンドに接続して直接本体マイクで収録。
ボーカルはミキサー卓のAUXからシールド1本で雑に繋ぎます。
簡易レコーディングの設営が5分で終わる!!!
マジで楽でした。
DTMやってるバンドマンに超お勧め。
ついでにギター用マイクも買おう。e609はちょい高なので、BehringerのB906でもいいぞ。
https://amzn.asia/d/eogtXnw
https://amzn.asia/d/3kcS3vN
付属マイク2ch+4chの合計6chなので、セッティングとしては
付属マイク:ドラムのオーバーヘッド
1,2ch:Gt1,2
3ch:Bass
4ch:Vo
とすると基本的なロックバンドの構成の録音ができる。
キーボードとか入るならボーカルはもう諦めて別撮りするか
ベースとドラムを近づけてマイクで一気に録っちゃうとかもアリかもしれない。
後日発売される外部入力向けカプセルを活用すれば、ドラムを1マイクで省略するとかも視野に入る。
(本当は8chくらい欲しいけどね)
ドラム収録ならセッティングは
付属マイク:オーバーヘッド
1ch:Kick_in
2ch:Kick_out
3ch:Snare_top
4ch:Snare_bottom
とかだろうか。タム全部立てるとチャンネル数が足りないので
キックとスネアにこだわってドラム全体の立体感を出せると良さそう。
まあ、ぶっちゃけちょっと6chだと足りないので
正直なところ8ch欲しいが、H6がフラッグシップ機なのでこれ以上だと
F8nProを買うしかなくなり、14万円かかってしまう…………
ここが気になる!H6Essential!
内部ミキサーの処理が簡易すぎる
一応、内部でミキサーを持っていて、バランス調整はできるということにはなっていますが
パンがない!
本当に音量調整だけでした。
コンプもないので録音した音は音割れしないけれど、音量差が大きいままです。
たぶん番組制作とかの声メインのコンテンツなら
環境音を付属のステレオマイクで録った上で、声だけセンターでバランス取るのでも十分かもしれないですが
音楽用途では物足りない!!
なので、
セルフでバンドレコーディングするような人はまあDTMも齧ってると思うので大丈夫だと思いますが
H6単体でのプリプロはちょっと物足りない印象です。
せっかくパラで録った音が全部センターに詰め込まれるので非常に気持ち悪いです。
あとはチャンネルリンクで無理やりステレオに振り切る方法もあるかもですが
リンクすると音量もリンクするので、出音での音量調整が必要になりそうです。
とにかく、
H6はレコーダーとして割り切って、ミックスをDAWでやるという2度手間がかかることは留意が必要です。
録ったその場で簡易ミックスしてそのまま共有…………みたいなのはぶっちゃけ厳しいと思います。
USBインターフェース機能があんまり有用じゃ無いかも
https://tascam.jp/jp/support/news/7356
https://zoomcorp.com/media/documents/F8nPro_32bit-float_applications_2022MAR_J.pdf
ZoomやTASCAMのHPにも対応表が載っていますが
ぶっちゃけ32bitfloat対応している機種なんてごくわずかです。
32bitfloat対応じゃ無いアプリだとどうなるかというと
0dbを超えたデータはアプリ側で音割れが始まります。
内部処理次第では多少堪えると思いますが
32bitfloatほどの余裕はなく
そのうえ、H6にはゲイン調整がないので
適当な音量の音源を収録すると、勝手に0dbを超えたデータを吐き出します。
この32bitfloat対応のソフトが少ない以上、
レコーディング以外の用途においての利用はかなり制限があると思いました。
たとえば生配信。
マルチチャンネルで収録したデータをそのまま使う場合は、音量次第で簡単にアプリ側の許容値を超えますし
H6でミックスした2chを使う設定にしたとしても
前に挙げた通り、H6のミキサーが貧弱なので、ゲイン調整程度の役割しか持ちません。
32bitfloat収録であるH6最大の恩恵である「音割れしない収録」を
そのまま配信などに利用することはかなり困難と言えると思います。
そもそも配信プラットフォーム自体が32bitfloatに対応していて、
ユーザー環境までそれが地続きになってないと、どこかで固定整数に変換されるのでどうしようもない話ですね。
32bitfloat自体が、そうした生収録向けの機能というよりかは
一発しかない収録時に、音割れといったミスがなくなるというメリットを受け取るしくみっぽいので
もし配信をやるとしたら、配信ソフト側でオートゲインを入れて
H6側はかなりローゲインな設定でミックスするような形になると思います。
普通のオーディオインターフェースと変わりませんね。
逆に本体にゲインが無い分厄介だったりもする。
DAWにつないで32bitfloatで録音することは可能ですが
本体で録ったものをファイルとして移動すればいい話なので、リアルタイムでDAWに収録する必要があるかは微妙。
SDカードをどうしても買いたく無いとか、
SDカードに入らないほど長時間連続して収録する場合とかでしょうか。
(512GBで6ch丸一日くらいは録れるはずだが)
USBオーディオインターフェース機能を
仕様一覧にしれっと書いてる程度におさえているのは、もしかしたらこういう部分で特段利点がないからかもしれないですね。
ライバル機 PotacaptureX8 とのスペック比較
32bitfloatで6ch収録のハンディレコーダーということで
明らかにライバル機はTASCAMのPotacaptureX8だと思います。
そっちは持ってないので、スペックベースで僕が検討した内容だけメモしていくと
PotacaptureX8は192kHzまでサンプリングレートを上げられる
これはPotacaptureの価格が上がっている1番の要因な気もします。
ZoomH6は96kHzですね。
このあたりは、どこまで有用かという議論も難しいんですが
いわゆる「フラッグシップ」であるなら、
現状の一般市場における最高レベルの192Hz対応というのは確かに欲しい要素だと思います。
ただ、実用上意味があるかと言われると…………?
本体マイクの形式の違い
Potacaputureは本体マイクの角度が可変で、XYだけではなくABタイプでのステレオ収録もできるようです。
一方でZoomH6はXY固定のマイクです。
一見、Potacaputureの方が有利に思えたんですが
Potacaputureの方は、実はマイクそれぞれが汎用の3.5mmジャックで接続されていて
本体から見ると、1,2chはアンバランス接続の入力端子として動作しているのが実態です。
一方でZoomは独自の接続端子で接続しており、
後日付属品としてXLRコンボ入力可能なアダプターを販売することを明言しています。
(旧H6とはまた違う形状なので流用不可)
Potacaputureの方があるいみ手軽に6ch収録できそうではありますが
XLRでのバランス入力を6ch持たせられる拡張性がZoomH6側の強みになりそうです。
本体性能の違い
Potacaputureのほうは、先に挙げたように192kHzの処理を実現するために、そこそこの処理能力を持った本体となっていそうです。
タッチパネル対応のグラフィカルなUIに加えて、ミキサー機能もパンがあるなど
内部処理については明らかにPotacaputureの方が高いと思われます。
おそらく、本体構造とかうんぬんではなくそのあたりが値段に直結している気がします。
ほぼ同様の機能ながら、必要十分な音を録る、という1点にフォーカスして
かなりコストカットして、手頃な価格で売れ線を狙ってくるあたりはZoomらしさを感じます。
まとめ
マルチチャンネル録れるレコーダーとしては、かなり使い勝手がいい!
でもミキサー関連の機能が弱いので、基本的には持ち帰ってDAWで編集する前提でいたほうがいい。
(MTRの代わりにはならないってこと)
ゲイン調整不要でサクッと録れる恩恵はH1でも同様なので
DTMやらないつもりならもういっそH1で十分だと思う。
H4は音楽用途向けとしては中途半端と言わざるを得ない。
ライブハウスでの録音でPAからラインのステレオMixがもらえるなら、
ステレオMixとエアを混ぜるので有用かもしれない。
USBオーディオインターフェース機能はオマケ。
32bitfloatである恩恵はオーディオインターフェースとしてはあんまり価値がない気がする。
さいごに個人的な感想
32bitfloatの収録を体験してみたい!!という気持ちで衝動買いしたが
バンドRecにおける有効度はかなり高そう。
毎回録音してもいいくらいの手軽さ。ただし帰ってMixするのがめんどい。
32bitfloatでのUSBオーディオインターフェース機能もちょっと期待していたが
よく考えると32bitに対応しているソフトが少ないのであんまり使い道がないことがわかった。
ちゃんとレコーディングする気ならゲインピシッと決めて録るほうが普通に良さそうなので、
H6をUSBオーディオインターフェースとして活用する機会はなかなかなさそう。
USB接続で、96k/32bitfloatのオーディオインターフェースとして使える。https://t.co/8bykUzk1pO
この記事の通り、StudioOneでの波形表示は
データの0dbを描画端としているみたいなので、見切れた部分は描画されずに割れて見えるが
フェーダーを下げて書き出してみるとちゃんと録れてるのが分かる pic.twitter.com/cVagLFHq9Q— さとうたくや (@n_s_lab_tokyo) March 9, 2024
StudioOneでの波形表示はちょっと心配になっちゃう仕様。