ToneXone
想像の3倍早く届いた……サイズ比較はonecontrolのミニペダルと。
toneXのほうが少し背が高くて奥行きが短い pic.twitter.com/YlrRzXtB0K— さとうたくや (@n_s_lab_tokyo) May 6, 2024
日本で5月末発売とのことですが、
競争率やばそうだったのでIK本体に個人輸入かけたら、想像の3倍早く届きました。
というわけでいち早くレビュー記事を書いてみたいと思います。
総評
サイズと価格というコストに対する、サウンドのパフォーマンスはとても高い。
操作や機能もできることを突き詰めてきた印象
マルチストンプ的なAllinOneを期待して買うのはNG。あくまでプリアンプor歪みペダルとして上々
実機を触ってみて感じた、気をつけるべきポイント
発売前のレビューは割とプロモ向けのレビューということで
どちらかというと良いところを紹介するのがメインだったり、そもそも使い方のレベルの高い人たちのレビューという印象です。
サウンドのデモとしては録音環境も相まって十分ですが、機能や操作性はやっぱり目線が違うかなとも思わなくもないので、
今回は、なるべくフラットなひとりのバンドマンに近い目線で
TONEXONEを買う前、使い始める前に知っておくべき意外なポイントを整理してみます。
1. プリセット数は20個まで
十分だよね、とは思います。
ただ、昨今のマルチエフェクターを考えてみると
プリセット数は100前後あるのがデフォルトかなーと思うので
マルチエフェクターを想像するとかなり少なく感じます。
このプリセット数が少ないのは、ToneXpedalよりスペックが低いという理由ではなく
おそらく、プリセット選択の操作方法による制限と思われます。
と、いうのも
TONEXONEのプリセット選択は、プリセット選択モードにしたうえで
上部の3つの小さなツマミのどれか一つを回すことで行われるような仕様となっています。
(公式のクイックスタートガイドを参照)
ツマミ1周しないので、可動域はだいたい300度程度と考えて、1プリセット当たりの角度を計算すると
プリセット数が全部で20個、重複してアサインできない仕様なので選択肢は18種類。
プリセット一つあたりに割り当てられる角度は300÷18=16.7度となります。
幅1cmないくらいの小さなツマミなので
これ以上狭くなると、望みのプリセットを選択するためには微調整が必要でストレスが大きくなりそうです。
ただ、ぱっと思い浮かぶ、レコーディング等で選択肢としたいアンプを思い浮かべると
おそらく5種類程度は誰でも思いつくと思います。
そしてTONEXはプロファイリングアンプなので、本来的にはゲインやEQなどの
アンプセッティングに別のプロファイリングとしてプリセット作成するべきなので
各アンプで4種類のゲイン・EQのプリセットを用意するだけでTONEXONEのプリセットは埋まってしまいます。
他にもTONEXONEはそのサイズ感から、歪みペダルのワイルドカードとして使いたいことも考えると
「なんでもできる状態」にしておくには20プリセットだと全然足りないという印象になりそうです。
もちろん、スタジオやライブハウスのアンプを使う場合
選択肢は1~2個程度が普通なので、圧倒的にTONEXを使う方が自由度は高いのですが。
マルチエフェクターの感覚をそのままにプリセット設定しようとすると、
20プリセットだと少し足りなく感じると思います。(僕は感じた)
2. すべてのパラメータはオートセーブ
これはQuickstartガイドには載ってなくて、Manualの方だけに書いてあるのですが
全てのパラメータは操作してから0.5秒くらいで本体プリセットに上書きされます。
オートセーブOFFにする設定は現段階では存在しません。
Manualには「アナログペダルみたいに使えるよ」と書いてありますが
DUALとかでつかっていると、ツマミが表している値と実際のパラメータが異なるタイミングもあるので
結構気をつける必要があると思います。
音作りの試行錯誤をしようとして、EQやゲインを変更した場合
変更前の値はどうやっても参照できないので、
変更前に戻したい可能性がある場合は、あらかじめセッティング時に手元にメモを用意しておく必要があります
もしくは、プリセットそのものをPCでエクスポートして保存しておくかです。
ただ、保存する操作をつけるとこのサイズ感だとかなり操作がダルい感じになりそうなので
これは悪い点ということではなく、そういう仕様だと理解しておく必要がある、という内容ですね。
3. PC/Pedalとの搭載エフェクトの差
TONEXPedalについては、リバーブは実は4種類のリバーブを選べました。
ホール2種類、ルーム、スプリング2種類、ですね。
TONEXONEでは、リバーブの種類は選択不可能です。
https://www.ikmultimedia.com/products/tonexone/?pkey=tonex-one#info
ちなみに、これは公式サイトの比較表を詳しくみるとわかったりします。
あとはPresenceやDepthといった端っこの帯域のEQも搭載されていないです。
搭載エフェクトの種類自体は
Gate/Comp/EQ/Reverb というようにPCもPedalも共通ですが
EQ,Reverbについては多少下位互換になっているのと、Compも本体だけだと1ノブでのコントロールなので
TONEXONEにおいて、エフェクトをきっちり活用するのは難しい。
とは言いますが、1ノブなので細かいことを気にせずにざっくり使える扱いやすさも同時に出たかなとも思います。
4. USBバスパワーでも動く
USBTypeCからの電源供給でも動きます。
スペックシートは別売りDC9Vinputとだけ記載されていますが、
実はUSB給電でも動きます。
ノイズについては、USB電源ってかなりいい加減なので
使う電源によって変わってきそうな気もしますが
そもそもPCに繋いでオーディオインターフェイスとして使う機材なので
USB経由のノイズが音に直接反映される……みたいな雑な設計にはなってないんじゃないかなと思います。
(多少の影響は間違いなくあると思いますが)
5. 付属ソフトはToneX ”SE”
いうならば「廉価バンドル版」というようなグレードのSEが付属します。
これは、
- 自前の機材のプロファイリングが可能
- オンラインのユーザー共有のToneModelは無制限に使用可能
という部分ではToneXの基本的な機能を無制限に使えるソフトウェアではありますが
IKが公式でプロファイリングを行った良質なToneModelは一部ダウンロードできないので
クオリティの高いお気に入りのTonemodelを探す手間がかかったりします。
わかりやすいところだと、TONEX自体の売り文句の一つになっていた
IKが公式でプロファイリングしたDumbleアンプのToneModelは使用不可能です。
Dumbleアンプなんて持っているユーザーは一握りですし
そのユーザーがToneModelとして一般公開する可能性を考えると
DumbleのToneModelを使いたいなら課金するしかない、と言っても過言ではないと思います。
ちなみに、TONEXPedalには
追加DLCを除く基本のToneModel全てが使える”MAX”グレードが付属しています。
で、気をつけるべきは
TONEXONEのファクトリープリセットの中には
MAXや無印でしか利用できないプリセットがいくつか含まれているということです。
さっき例に挙げたDumbleも、デフォルトのプリセットで1種類登録されています。
このプリセットを上書きしてしまうと、
Maxが付属していないTONEXONEユーザーは、そのToneModelを復活させることが難しくなります。
ただでさえ20プリセットと少なめな中で、
SEでは使えないプリセットが10種類以上あります……
もし、TONEXONEがはじめてのTONEXとなるユーザーがいたら
はじめにすべてのプリセットのバックアップを取っておきましょう
ちなみに、最初から入ってるプリセットのうち、どれがどのグレードかは
公式サイトの「スペック」に記載があります。(マニュアルにはないんだこれが・・・)
https://www.ikmultimedia.com/products/tonexone/?pkey=tonex-one#specs
実際に触ってみた感想
ここからは通常のレビューっぽい部分をつらつらと書き記していきます。
サウンドについて
これはTONEXというところで特に目新しさもないのですが
このサイズのアンプシミュとしては最高峰と言って良いでしょう。
フルアナログの方がサウンドが格好良くて好き、とか色々好みはありますが
元となるアンプが存在し、そのサウンドを再現するという観点において
このサイズのエフェクターでTONEXONE並ぶエフェクターは現時点では一切存在しないと思います。
プリセット間の音切れは
感覚としてはToneXPedalより少ない……気がします。(気のせいかも)
ToneXPedalは、次にロードするプリセットは任意に選べる仕様のため
フットスイッチを押したタイミングで必ず次のプリセットをロードする必要がありますが
TONEXONEはDUALモードの場合もフットスイッチ押下後の音色はひとつに定まっているので
おそらく動作も最適化されているような気がします。
これについては後で実測してみます。
操作感について
フットスイッチとALTボタン、メインのVOLと3バンドEQ
合計6つのコントロールでさらにツマミにはスイッチを内蔵させないというシンプルな設計。
ToneXPedalではいくつかのつまみはデジタルの稼働量を読み取るタイプのツマミで
ボタンも機能として追加されていたりしましたが
TONEXONEにおいては、まわすツマミはすべてアナログのポットと思われます。
このあたりで徹底的にコストカットして
手に取りやすい価格を実現している気がします。
その分、いくつかの操作は複雑にはなるのですが
できることが限られている分、逆に覚える量は少なかったりします。
たとえばToneXPedalなんかだと
プリセットプロパティとグローバルプロパティがそれぞれ別に用意されていたり
ALTモード以外にもパラメーターツマミ1つで各種パラメータを設定したりと
できることが多い分、どこで何をするかをきちんと覚える必要もあったのですが
TONEXONEの場合は、
基本モードは3種類(+ALT1種類)、
パフォーマンスモード(ALTあり)、グローバルセッティングモード、プリセットセッティングモード
それぞれのモードでどのつまみがどんな操作になるかということで
6×4=24種類のパターン、、、、
そのうち、パフォーマンスモードとパフォーマンスALTの時の設定は
本体に印字されているので
実質覚える操作は
6コントロールx2画面の12種類。
それと各モードに入るための操作手順3つ
合計15個の操作パターンを覚えるだけで全機能が使えます(笑)
実際の操作については公式のクイックスタートガイドを参照してください。
今月末には日本語版も公開されるでしょうw
操作パターンが少ないので
慣れるとマニュアルを見ないでサクサク設定変更できるようになります。
ただ、GLOBALSETTINGへ入るための長押しの時間が6秒と長いのはちょっと面倒ですが。
機能性について
TONEXとしてのエフェクトペダルとしての機能性は
必要十分と言ったところです。
外部入力やMIDIが無いので、リアルタイムに動作を変えていくような使い方はできませんが
それはサイズ感の制約なので全く無問題だと思います。
それより恐ろしいのは
このサイズ感でオーディオインターフェース機能とヘッドホン出力可能なこと……
ギター向けマルチエフェクター特有のボリューム調整の難しさはあるものの
非力なラップトップPCでもTONEXの高品質なギターサウンドで手軽に録音できるという強さ。
ただ、残念なことに
Dry/Wetの録音は出来ないようです。
また、オーディオインターフェース機能があるということは
アウトプット端子にヘッドホンが繋げるということになります。。。
単品でヘッドホンでの自宅練習も出来ます。
一つ疑問なのは
ヘッドホンの出力とギターアンプ向けの出力って結構信号レベル違う気がするけど
どう解決しているんだろう……?
TRSプラグがさされたらステレオで少しレベル高めに駆動しているのだろうか。
その場合、ステレオエフェクターにつなげると少しゲインが上がるということに……?
これから買う人or買った人向けのちょっとしたTips
ユーザー登録カード、失くすなよ!!
あの、本体にシリアル番号書いてないですこれ。
底面蓋開けてみたけど、中にも書いてなかった。
ユーザー登録に必要なシリアルナンバーが書いてあるのは
REGISTRATION CARDと書かれた1枚の紙っ切れのみ。
これをなくすとユーザー登録できないのでPCとの連携が出来なくなります(笑)
マジでなくしかけて15分探した僕からの忠告です。
買ったらまずユーザー登録。そしてREGISTRATION CARDを写真に取っておけ。
音出したいのはわかるけど。
マジで失くしたら後悔する。
プリセット管理表を作った方が良い
本体でプリセット名が全く分からないので
出先でころころプリセット変更したいなら管理表を作っておいた方が良いです。
20色選べるとはいえ、色とプリセットの対応を覚えるなら
結局プリセットの順番全部覚えるのとほぼ労力変わらないですw
というわけでGoogleスプレッドシートで作ってみました。
色とタイプはプルダウンで選べる感じで。
テンプレとして公開するので
ファイル→コピーを作成 で自身のアカウントにコピーして使ってください。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1pkIVXoApzqOtRDnhzxpj7GUxXen5S5pqtWpENrDKzhU/edit?usp=sharing
スタジオで音色変更するときも、これ見ながらやれば迷いません!!
(操作は細かいから結構ミスるけど)
USBバスパワー動作、結構アリかも
TONEXONE、USB電源で動きます。
モバイルバッテリを持ち歩くような人なら、出先でちょこっと練習したいとかのニーズを簡単に満たせそうです。
いつも使うヘッドホン用の変換ジャックとモバイルバッテリーをギターのギグケースに忍ばせておけば
出先のホテルやスタジオのロビーとかでもサラッと良い音でギターが練習出来ちゃいますね
歪まないプリアンプのモデル作っておいたぜ!!
このサイズだと普通にIRキャビシミュとしても使えたら便利だなーと思って
デジタルのループバックをキャプチャした、音色変化がほぼないプリアンプモデルを作っておきました。
https://www.tone.net/tonex/tonemodels/54379
これをつかえば、プリアンプ部分はただのEQとして使えるはずです!!w