LOOPERSを終えた感想とか(ネタバレ込み)

友人に勧められて
Keyの新作キネティックノベル「LOOPERS」をプレイしました。

と言うわけでハロワで感想をベラベラとしゃべった舌の根も乾かぬうちに
LOOPERSの感想というか、色々振り返りながら思ったことをまとめておこうと思います。

基本的にネタバレ含む感想なので、未プレイ者はプレイしてから読むか、読んでからプレイするかの2択な。

大まかなストーリーの流れ

①ヒルダとの再会、ジオハンティングの説明
②1回目の8/1
③ループに気づく、サイモンとの出会い
④ルーパーズの仲間入り、豪遊
⑤ミアとの宝探し
⑥ルーパーズとの宝探し
⑦レオナの目覚め
⑧渦の収束の予兆
⑨ミアと2回目の宝探し
⑩渦最終日、一人のこるミア
11タイラはミアを探し、ミアはタイラを探す

といった感じでしょうか。
ちょっと細かく分けすぎた気もしますが、映画と違って文量も多いのでこれくらいに分けても良いでしょう。

ストーリーの軸やテーマとギミック

ストーリーの構図としては、
基本的にはタイラとミアのボーイミーツガール。

ループ世界という非日常で出会った二人が、二人で過ごす日常を目指す物語。

非日常的な環境で生まれた愛は長続きしない、なんてセリフはありますが、そんなことは関係ねーぜと言わんばかりのベタな構図。

沈没船で出会った二人が恋に落ちる、みたいなもんですね。

テーマとしては、
・宝探し
・無限の停滞と終わりに向かうが新しい何かが見つかる明日
というあたりを絡めた感じでしょうか。

この宝探しが物語の軸になっていて
・宝があると信じるから前に進める
・宝が見つかっても見つからなくても、探す過程も楽しい
・宝が見つかればなお嬉しい
・宝を隠す側は、相手のことを考えて隠さなきゃならない
・失って初めて気づく宝もある
といった宝探しの教訓じみたことを、主人公のタイラ君がルーパーズに、時にはサイモンがタイラに、そしてルーパーズが読者に教えてくれます。

じゃあ宝ってなんなんだよっていう部分については
ルーパーズ各々が「本当に自分のやりたいことを見つける」という形でその人の掛け替えのない宝を見つけたと提示しているような気がします。

 

テーマと密接に関わるギミックは
ジオハンティング、位置情報宝探しですよね。
僕の場合、職業柄気になってしまうというところもありますが、
都市伝説みたいな物語が得意な竜騎士先生ならではのギミックですね。

もともと、よくある都市伝説として
願いが叶うキーホルダー、みたいな感じで、
見つけたら願いを唱えた後、また新しい場所に隠さなきゃならない
みたいな都市伝説って割とあるんですよ。

僕としては大好きなラノベであるAURAを例に挙げたいところですが。

宝探し×願い事 というのは都市伝説系の鉄板と言っても過言ではないが
そちらを都市伝説にせずに、オープンなゲームとして、
そこに「探し女」とかいうホラー寄りの都市伝説を作ってぶつけてくるあたりはなかなか上手いなあと。(誰目線なのか、って感じですが)

あとは、タイトルにもなっている
・ループ
という要素ですよね。

割とループものというのがメジャーになって久しいですが
ループを望むもの、ループから脱出したいもの、に2分されるのは定石通りだと思います。
ただ、ループから脱出したい派のタイラに「宝探しは探している間が楽しい」と言わせたりと細かいバランス調整がされていますね。

 

伏線とか、匂わせる表現とか

明らかにイントロの昔話みたいなやつは、もう読者の目の前につったにんじんのごとき伏線ですよね。いや、伏してすらいない。あれは完全に前フリってやつだ。

宝物、宝探し、願い

と言ったキーワードをぶら下げて、嫌でもその後のストーリーの大まかな想像をさせる。
いやらしいですね。

で、もう一つの明らかな伏線は
心臓を探すと言われる”探し女”ですね。

夜な夜な心臓を探して歩き、一緒に探して見つけてあげないと呪われるという。
ただ、都市伝説チックにアレンジしているせいで、タイラも読者も本当にただの与太話にしか聞こえません。

最終的には、あれは渦の最終日のミアの幻影だったというオチではありますが。

 

あとは、レオナを昏睡状態にしておきながら、
ストーリー中盤で目覚めさせるという。
作中でも1、2を争うドラマチックなシーンではありますが、あれをストーリーに盛り込む必要性はあまり大きくなくて、
単純にミアが昏睡になることと、それを目覚めさせるという構図の前例を作っておきたかっただけのような気もします。
まあ、おかげでレオナを最初に昏倒させたりとかで、つかみの部分の印象もアップしているので、面白くする上では必要だった、と言えるのかもしれませんが。

オチでタイラがハートのヘアピンのようなものをミアに渡すシーンは
最初の宝探しが伏線……というよりかは、単純に後味の調整として追加しただけだと思います。

まあ、探していたのは心臓じゃなくて、ハートでした
ってオチは最初からやりたかったオチの一つかもしれませんが。

 

シナリオ構成・展開について

あえて起承転結に分けるとすれば

起:ルーパーズの仲間入り、ミアに宝探しを教える
承:ルーパーズの仲間を元気づける、ルーパーズで宝探し
転:渦収束の予兆あり、ミアがゲートを潜らず渦に残る
結:残ったミアを救い出す

と言ったところでしょうか。

それぞれも起承転結に分けていくと

起-1:ヒルダとの再開
起-2:ループに気づく
起-3:ルーパーズ登場
起-4:各地で遊び、最後にミアと宝探し

承-1:宝探しでルーパーズを活気づける方法をサイモンに提案
承-2:ルーパーズで宝探し、みんな活気づく
承-3:レオナの目覚め
承-4:ルーパーズ全員で宝探しして遊ぶ

転-1:渦収束の予兆あり。過ごし方を問われる
転-2:ミアとのデート
転-3:ゲートを発見してからゲート通過の準備完了するまで
転-4:ゲートを潜らないミア、おまじないの告白

結-1:ミアの現状の開示
結-2:渦内のミア
結-3:助けるために走り回る
結-4:公園でみあを見つけて、その後目も覚ます

それぞれの章に山場があるというよりかは
物語全体の大きな流れに沿ってイベントが配置されている印象ですね。

個人的にはもっと起伏の激しいシナリオが好きなのですが。
一度ルーパーズが解散しかけたりとか、タイラが挫けそうになったりとか。
そういうイベントがあっても面白いなと思います。

ただ、改めてみると、余計な要素が1つもなく、物語の核となるイベントだけが散りばめんられてるような感じですね。
だからこそ、短いとも感じるが、ストーリー的にはきちんと完結している。

美少女ゲームと呼ばれるような作品は、割とヒロインとの日常に重きを置いているからか、ストーリー上必須ではないイベントがたくさんあるイメージですが、Keyの提唱するキネティックノベルというのはそう言った、美少女ゲームらしい無駄を削り取って、改めて短編読切の小説に近いスタイルで、絵と声と音が合わさった作品を作るという部分にもあるのかもしれない。

 

キャラクターの役割について

 

・タイラ

主人公ポジション。
ループという停滞しやすい世界で、停滞しない特性を持つ。
みんなを救うポジションではあるが、そういう立ち位置のやつは大抵自分自身が救われない感じになる。

・ヒルダ

状況解説要員。バカ担当。
というかヒルダをテンパらせることで、主人公が状況をヒルダに言い聞かせるシーンが生まれて、読者にも状況が伝わるようになる。
あとは、ビビりという設定があるおかげで、都市伝説を物語の前半に持ってくる違和感が薄れる。

・レオナ

設定解説用イベンター。
昏倒・目覚め、と言った渦の特徴的な設定の1つをより明確に読者に伝えるために、昏倒してもらい、渦中で目覚めるイベントを担当する。
あとは、ヒルダのビビり属性と合わさり、物語序盤で探し女を登場させるアシストをしている

・サイモン

チート要員
こいつがいないと攻略速度が5倍くらいになって、今回の作品の尺に治らなくなる。
物語の進行上の不都合な部分をある程度解決してくれる存在。
短期決戦な物語構成だとどうしてもこういうチート存在が欲しくなるが、長編になるなら、役割を各メンバーに分担させた方が自然かもしれない。

・その他ルーパーズ

設定解説用イベンター・タイラの引き立て役
ループは楽しそうなだけじゃなくて、心が折れそうになるんだぞ、ということを説明するための題材であり
タイラに救われることで、タイラの存在感を強める引き立て役。
キャラ濃い割に全員ちゃんと脇役だった

・ミア

ヒロイン。物語のキーパーソン。元凶。悲劇担当。
最低限の登場人物に絞れって言われたら、多分ミアとタイラだけでも物語が描けると思う。
単純にヒロインであることが役割だし、物語のクライマックスの直前にある悲劇担当。
今回は、悲劇にあうというよりかは、もともと持っていた悲劇的設定をクライマックス直前で明かすことで、物語の盛り上がりを演出している。

 

設定の確認や諸々考察感想

※ここからはオタクの妄想8割の散文になります。

○願いの叶う魔法と時の渦について

これは、そういうもの、として受け取るしかなさそう。
宝物を人に譲ると本当に願いが叶うというのは、まあ奇跡だとして片付けるが。
渦については、願いで生まれた事象というよりかは、願いと関係なくあの世界には存在している自然現象だと思って良いと思う。

本編内の言葉通り、台風みたいに自然界にごく稀に発生する自然現象が時の渦という事象で、ミアが願ったから発生した特別な事象ではない。と思いたい。

そうでなければ、ミアの願いは過去の歴史まで変えて、時の渦という事象を生み出したということになってしまう。
それはそれでSF的にはアリな設定な気もするが、舞台の構図が複雑になりすぎてしまう。

ミアが願おうと願うまいと、アメリカの行方不明事件が時の渦が起こした事件として、あの世界には存在していた、と考えるのが自然そうだ。

願いの叶う魔法自体は、固有の元ネタがあるなしとかじゃなくて
単純に都市伝説の「願いの叶う〇〇」をアレンジした設定だと思います。
手元に戻った時魔法が解けてしまう、は物語のクライマックスを演出するために必要な条件として設定されていますね。

○心臓を探す探し女と時の渦の幻影

気になってセリフをほぼ全てメモってたんですが、
クライマックスのミアのセリフそのままでしたね。

サイモンの言っていた通り、
時の渦では、いくつもの同じ日が繰り返されるため、いつかの8/1が亡霊のように見えることがある、という説明で納得できそう……だったのですが。

そもそも心臓を探す探し女の話は、都市伝説として7/31の時点であの街に広まっており、
ヒルダが初めて心臓を探す女らしき姿を見たのは、ループが始まる8/1A M5:00より前。タイラとレオナと宝探しをしている最中です。

わかりやすく考えるなら、あれはびびったヒルダの見間違え……というところが妥当ではありますが。

あのタイミングで探し女≒ミアの幻影が見えることが、一つの意味を持つとしたら。
時の渦の幻影は、必ずしも同じ時間同じ場所でなくても現れるということをあの時点で示唆しているのではないでしょうか。

時の渦の中でミアと見た、サイモンやタイラの幻影は
明らかに実際にそれを行なったのと近い時刻で同じ場所で見ていたため、幻影は同じ時刻同じ場所で見るものだと読者に感じさせています。

ヒルダが初めての宝探しで見たミアの幻影だとすれば、
そのミアは時の渦の渦中なので、8/1AM5:00以降のどこかを歩いているべきです。

つまり、時の渦の幻影を見る≒時の渦の中で起きている事象を観測することは、時の渦の前後のわずかな期間であれば、同時刻に同位置にいなくても可能である、ということが暗に示されています。

これがどう物語につながるかは、既に想像がついていると思いますが
時の渦脱出後のタイラとミアです。

クライマックスの宝探しシーン。
ミアは時の渦の渦中なので8/1に存在しているはずですが、タイラは既に翌日の時間軸にいます。
時の渦の幻影が、同じ時刻・同じ場所でしか見れないのであれば、タイラはミアと通じ合うことは出来ませんでした。

クライマックスのシーンで、時間軸がずれているのに通じ合えるのは奇蹟のように思えましたが、一応それが可能かもしれないことは、作中で示されていたようでした。

○OPテーマ:千夜一夜VORTEX

どうでもいいですが、千夜一夜は千夜一夜物語のことで、
まあざっくりいうと「続きはまた明日」と言って明日に期待させる作戦を千夜続けるような話です。
VORTEXは和訳で渦。

まあ、LOOPERSの様子そのままの曲名ですね。

○悲劇の質について

今回のシナリオの明確な山場となるポイントは
⑴レオナの復活シーン
⑵ミアとの再会シーン
の2つですね。

山場となるポイントの前は悲劇を起こしてあえて盛り下げることで
山の起伏を激しくするというのはまあ当たり前の手法だと思います。

それぞれの谷となる悲劇を読み解いてみると

⑴レオナの復活シーン

親に散々やらされた勉強で青春を謳歌できず自殺まで試みたレオナ
ようやく人並みに遊べると思ったところで時の渦に巻き込まれ、親友とも時間的に離れ離れになり心が病む。

割と精神面で攻めてくる悲劇ですね。過去の悲劇が今につながる感じです。
そこから復活することで、親友のヒルダと遊ぶ時間ができて、渦から出てもそのまま青春を謳歌できる可能性が出てくるという2つのハッピーが発生します。

⑵ミアとの再会シーン

実はミアは眠り病で、眠るとどのくらいの期間眠り続けるかわからない
時の渦を抜けたとしても、未来がある保証がない。

どうしようもない病気という悲劇ですね。そして、どちらかというと、未来に対する悲劇ですね
結末としては、眠り病は手術である程度治っており、目が覚めたのでタイラとまた新しい未来に迎えるというハッピーが発生しました。

 

物語上でいくつか悲劇を演出に加える場合は、
それぞれの悲劇の質を考えて、被らないようにしないと「ああまたそれか」ってことになりそうなので、こう言った面は物語を作る際には意識しておきたい。

ただ今回の場合、1日をループするという設定の都合か
全て過去の悲劇が判明するという流れになっている気はする。
その場で何か悲劇的なことが起こる描写というのもアリだったのかもしれない。

○総じて感想

面白かった。けど、濃かったかと言われると微妙。

設定も物語の根幹の必要最低限、シナリオ展開もあまり寄り道もなくキャラの深掘りも少ない。

ただ、展開としては山も谷それなりにあって楽しめたので
ライトな短編読み切り小説のような感じ。

男キャラであるタイラとサイモンが色々超人で
ジョウは能天気すぎるから
男キャラクターに感情移入しづらかったという点も、濃密に感じられなかった原因かもしれない。

人間の弱みみたいな部分がもっと押し出される作品が好きなのかもしれない。

 

○オマケ

体験版範囲を終了した時点での僕のシナリオ展開予想

心臓病でほぼ助からないとされている少女ミア。
幼い頃に男の子と遊んだ記憶だけが楽しい思い出だった。
そのときに聞いた「大切な宝物に願いを込めて、それを誰かに譲りなさい。」を信じて、
いつかまた元気にあの男の子と宝探しができることを願い、宝物とも言える男の子からもらったフィギュアをまた別の人に渡す。
魔法はなぜか本当に存在したようで、そのフィギュアがミアの願いを叶えて時間の渦を発生させる。
そのフィギュアに関わった人間が渦に巻き込まれる対象。
全てのルーパーズはなんらかの形で過去にそのフィギュアに関わっていて、
自身の願いもそのフィギュアに託していた。
もしかしたら、楽しく遊びたいと言う願いだったのかもしれない。
全員の願いをタイラが起点となって宝探しと言う形で叶えていき、ミアの番になって、ミアの心臓病の話が出てくる。
観覧車の中で、”ループから出たら絶対にまた一緒に観覧車に乗る”という約束をタイラとミアは交わす。
全員の願いが叶うと、ジオハンティングアプリにタイラかミアの名で、心当たりのない宝探しクエストが見つかる。
苦労して探し出すとそこには、あのフィギュアが見つかる。
全員がそのフィギュアに関わっていたことが判明し、ルーパーずの参加条件が判明したところでゲートが開く。
急いで脱出を試みるルーパーズだが、フィギュアが原因と言うことで、自分の願いが渦の原因だと気づくミアは
この世界に残ると言い出す。
タイラが、フォギュアとかこの世界のループの思い出とかを大事そうに抱えるミアに対して
「そんなもんより、明日のほうがもっと面白い」と言って、一緒にループから抜け出す。
-HAPPYEND-

 

もう少し尺が長くて、各キャラクターを深掘りしていけるような状況なら
こういう設定もありだったかもしれない。
思ったより短く、シンプルにまとめられていたなあ。。。

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