IK Multimedia Axe I/O というギタリスト向けのオーディオインターフェースについて語ります。
新しいオーディオインターフェイスです。
ギターの録音に特化したインターフェイスということで期待しています pic.twitter.com/hj1IqAwo7f— さとうたくや (@n_s_lab_tokyo) July 1, 2019
2019年に購入ということで
かれこれ2年ちょっと使い込んで、今更なレビューですが
いまだに現役の機材だと思うので、レビューとかをあらためてしてみようかと思います。
Axe I/Oとは?
数少ない「ギタリスト向けオーディオインターフェース」を謳う製品ですね。
製品の概要は、ギタリストの鈴木健治さんがレビューしてる動画がわかりやすいので、
とりあえずこれをチェックですね。
リアンプ編:https://youtu.be/vQ2XEgGTeEA
どこら辺がギタリスト向けかと言うと
- ギター・ベースに最適化されたインプット周り
- アンプシミュレータの有名どころ「Amplitube」が付属
- 上記動画では「Amplitube4」だけど、今はメジャーバージョンアップされた「Amplitube5」がついてくるはず。
- リアンプ用の出力端子がある
この3点は、のちに発売されたAxeI/O Soloも共通ですね。
せっかくなので、上記3点それぞれ詳細にレビューしていきます。
ギター・ベースに最適化されたインプット周り
ギターの信号は結構微弱(ハイインピーダンス)なので、適当に扱うと劣化しやすいので
多くのオーディオインターフェースは、そうしたハイインピーダンス向けの入力端子を備えていることが多いです。
ただ、ギターの場合エフェクターを間に挟んだりすることでインピーダンスが容易に変化し、
使うエフェクターなどによっても大きく信号のインピーダンスが変化します。
「じゃあインピーダンスを調整すればいいじゃん」
ということで、入力インピーダンス調整をつけたのがAxeI/O。
先ほどあげたレビュー動画にも使用感がレビューされていましたね。
ついでにFETの味付けありのバッファーと味付けなしのバッファーを切り替えるスイッチ、
アクティブPUやローインピーダンス出力のエフェクター接続用のACTIVEスイッチ、
状況によって変化しやすいギターサウンドのためにいくつも調整できるスイッチがあります。
すごそうでしょう?でも、使わないです。
僕がものぐさなだけかもしれないですが、
面白い機能ですがあまり使わないです。
まず、気分でギターを持ち換えることもあり、
設定値をギターごとに変えるのが面倒なので、常にハイインピーダンスな設定にしています。
つまり、通常のオーディオインターフェースのHi-z端子と同様の状態ですね。
FETのバッファーもONOFF比較するほど細かい音の違いを気にするでもないし、
個人的にはかけてた方が好きな場合が多いので、常にFETモードで使ってます。
……まあ、調節できると言うこと自体がメリットなのかもしれませんが
セッティングの再現性という観点でも、
ゲインに加えて、ZToneの値もメモしておかなければならず、固定してしまった方が再現が楽ですね。
ぶっちゃけ、後段のEQなどのエフェクトでもある程度カバーできるんじゃないかなとも思うので
あまりインプットのコントロールをこぞって調整しようとは、僕は思えないです。
僕の個人的な感覚として
音作りのしやすさ・再現性>Ztoneでできる音質の微調整
という感覚です。
オーディオインターフェースを使って、プラグインのアンプシミュを使っている人にとって
アナログのツマミの値を覚えるというのは「面倒な手間」に含まれる作業だと思います。
逆に、生アンプとかを使っている人にとっては当たり前の作業だとも思いますが
その人はこの機能使わないよね!?ってことで、ちょっとユーザ層と合ってない印象。
もちろん、音作りを極限までこだわる場合には、他にない唯一無二の機能です!!
かなり微妙なニュアンスが調整できるので、
どうしても欲しい音にならないときとかに少し動かしてみたりはしています。
アンプシミュレータの有名どころ「Amplitube」が付属
Amplitubeはソフトウェアのアンプシミュレータの中でも有名どころの1つで、
そのサウンドの生々しさには定評があります。
ソフト自体は別記事でも語ってるので、ここで細かくは語りませんが
バッサリ3行でレビューすると
- 空気感の感じられるサウンドで弾いてて気持ちいい
- キャビシミュが設定が細かくて面白い
- 公認モデルがあるのは強みだが、そちらは基本的に課金
DAWなどで使うプラグインタイプだけでなく、スタンドアロンのアプリもあるので
そもそも演奏自体に使えるアンプシミュレータという立ち位置ですね。
Axe I/Oはその開発元であるIKMultimediaのオーディオインターフェースということで
かなりAmplitubeと合わせて使用するのに最適化されています。
公式HPに、本体のダイアルでプリセット選択ができるとか
EXPペダルが接続できるとか書いてあるけど、
そんなことはまあオマケでしかないです。
AXE I/Oは最小でバッファー・サイズ8 Samplesまでレイテンシーを詰めることが可能です!
数あるオーディオ・インターフェースの中でも、最小の部類でございます。https://t.co/6Ihc61y4dl https://t.co/s3utvAQjuL— IK Multimedia JP (@ikmultimedia_jp) March 7, 2019
オーディオインターフェースは、リアルタイムで処理しているようですが
実際のところデジタルデータの計算処理を行なっていて、その処理速度は状況によって上下する場合があるので、
音声や映像をアナログのように絶え間なく処理する場合は”バッファー”というしくみで少しだけ貯めることで
処理速度の波を平均化して、一連の信号を違和感なく処理するような仕組みになっています。
その”バッファー”の量が多い方が、処理速度に対する猶予が増えるので
いわゆる「処理落ち」などが発生しにくく安定させることができるのですが
対価として、一旦貯めて処理している分だけ、入力信号に対する遅延、つまりレイテンシが発生します。
そのバッファーサイズというのは、本体の処理スペックやPC側のスペックによって設定できるあたいが変わるのですが、
Axe I/Oはそれを8sampleという小さい値に設定できる、と言うことを公式で謳っているのはありがたいです。
まあ、大体の場合は
32Sampleくらいで十分にレイテンシを感じないようになるのですが。
もちろん、8sampleでAmplitubeを動かすにはPC側のスペックも問われます。
まあ、最近のインターフェースは結構小さい値にできるものが多いので、気にすることもないと思いますが
公式が公言しているので、AxeIOについてはギタリスト的には安心感が高いかなと。
リアンプ用の出力端子がある
そもそもリアンプって何よってところからですね。
ReAmpの文字の如く、再びアンプへ戻す行為です。
本来、オーディオインターフェースに録音する場合は
ドライ音を録ったなら、ソフトウェアのアンプシミュレータで加工するしかなく、
アンプ実機の音が欲しいので、アンプを通してマイクで録るなら、後から音色の調整はできない
というのが普通ですが
ドライ音で録った音を、再生した信号をアンプに送って、
改めてアンプ実機の音で鳴らした音を録ってしまおう!
というのがリアンプの考え方です。
なんだ簡単じゃん?と思うかもしれませんが
ギターアンプはかなりアナログな機械なので
入力される信号のインピーダンスやレベルによって大きく音が変わってしまいます。
なので、通常のヘッドホンアウトやラインアウト端子でリアンプすると
思った通りの音にならない場合が多々あります。
そうしたリアンプをするためだけの専用機材も売ってます。
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/90709/
2万円超えますが。。
AxeI/Oにはリアンプ向けに調整されたAMPOUT出力があるので、
専用機材なしにリアンプできるのは、ライトな宅録ユーザーにとってかなりメリットです。
個人的なお勧めは
内部のルーティングの設定で、Input1の入力信号をそのままAmpOutに出力させることができるので
Input1にギターを繋ぎ、ドライ音をレコーディング
同時にAmpoutから普段の機材に繋いで、アンプにもマイクをたててInput2でレコーディング
とすることで、Dry/Wetの両方が同時にとれるので、いい感じのリスクヘッジになります。
スタジオでアンプ録音したいが、マイキングがうまくいってなかったら、家に帰ってアンプシミュで音を作るとか
アンプシミュと実機で比較しながら設定を詰められるとか。
ちなみに、上記の話はアンプに限らず
手持ちのエフェクターでもできるので、後からエフェクターの設定値を客観的に調整したりもできます。
全部マルチエフェクターに任せてるようなギタリストにはあんまり恩恵ないですが
アナログ機材を併用する人なら、結構有用だと思います。
その他のメリット
IKmultimediaのハードウェア製品ということで、
IKmultimediaの各種ソフトをクロスグレード価格で買えますw
MODOBASSとかMODODRUMとか。
僕はTotalStudioをクロスグレード価格で買っちゃいましたw
ギタリスト以外にはどうなの?
ぶっちゃけお勧めするほどではないかな・・・
特にマイクプリへ対する音質的な不都合は感じないのですが
多少ヘッドホンアウトのローのパンチ感が弱いかなと思うのと(個体差かも?)
外部電源が必要だったり、卓上インターフェースなのにコントロールが全て前面に偏ってたり。
なんか、全体的に使いやすい機材という印象はないです(笑)
2in4.5outのインターフェースとしてはちょっと割高ですし。
(outの0.5chはAMPOUT分、、、)
この価格帯なら
AudientのID14mk2とかMOTUとかがいいと思います。
AxeI/Oの価格の1/3は、Amplitubeの価格だと思っているのと
リアンプ周りのユニークさで価格を維持している感じがあります。
Axe I/Oのここがダメ!
○電源スイッチが背面にある
ON/OFFがめっちゃめんどい。
○明らかにハーフラックサイズなのに、ラックマウントアダプタがない
卓上で使う想定なら、さっき言ったように上面とかに大きくコントロールを配置すべきだ。
○入力切り替えが自動
inst端子にプラグを挿すと、そのチャンネルは自動的にinst端子を使うようになる。
裏面にフォン・XLRのコンボジャックがあるんだけど、そっちに刺さっててもinst挿すと優先されちゃう。
前面にあるので、抜き差しすぐできると言えばそうなんだけど、
管理ソフト上でくらい操作できるようにしてほしかった。。。
○管理ソフトのインストールのためだけにも、IKmultimediaのProductmanagerが必要
インストールが回りくどくて面倒臭い……
まあ、Amplitube含めたIKmultimedia製品使うなら結局インストールするんですけどね。
○48Vファンタム電源スイッチが2ch共有
まあ、この手の宅録用機材だと一般的な仕様だとは思いますが。一応。
Axe I/Oは何と比較するべき?
まあ、AxeI/Oを買おうか迷ってる時点で、ギタリストorベーシストだとは思うんですが、
ギタリスト・ベーシストが宅録で使うオーディオインターフェースとして、比較対象になりそうな機材を紹介して、簡単に比較していこうと思います。
1.普通にオーディオインターフェースと比べる
ギター用とか考えずに、普通に評判のいいオーディオインターフェースを買うのは有効だと思います。
先にも上げたような、AudientのID14とか
MOTUのM2とか。
別途、アンプシミュレータのソフトを買う必要はありますが、
かかるコストはあまり変わらないかなと思います。
リアンプ機能に魅力を感じず、マイク録音や再生時の音質を少しでも高めたい場合は
同じ予算額なら普通のオーディオインターフェースの方がおすすめかもしれません。
2.DSP内蔵タイプのオーディオインターフェースと比べる
AxeI/OはPC側で音声処理をする、Amplitubeというソフトを使用する前提となっていますが
そもそもオーディオインターフェース内でエフェクトをかけてくれる機材なら、
PCスペックに依存せずに、かなり小さいレイテンシでエフェクトがかけられるようです。
APOLLO SOLOとか、ZenGoとかが有名ですね。
単純にオーディオインターフェース自体の性能が高いモデルですが
がっつりDTMをやるつもりなら、十分な恩恵が得られると思います。
ただし、価格帯がAxe I/Oより一つ上になります。
リアンプ機能もないので、ギタリスト視点でみるとAxe I/Oのほうが使いやすいと思います。
ただし、作編曲やVocalRecを行うエンジニア的な視点だと、なかなか迷いどころだと思います。
あとは、低価格帯だとZOOMのGCE3とかもありますが
Zoomの2世代くらい前のエフェクトなので、音質的には微妙な気がします。
3.オーディオインターフェース機能付きのマルチエフェクターと比べる
まあ、AxeI/Oを買う人が迷うべきはこの選択肢かなと個人的には思います。
最近のマルチエフェクターはドライ音を別途録音できる機能があったり、
マルチエフェクター内のアンプモデルでリアンプできる機能があったりと
単なる録音デバイスから、宅録で実用できるデバイスへと変わってきている気がします。
わかりやすい有名なところだと、HxStompとかGt1000Coreとかですね。
(BOSSのGT-1という懐かしい機材とかもありますが、そろそろ古い…)
AxeI/Oに比べるとコストはかかりますが、
普通にLiveとかスタジオでも使える機材なので、宅録以外の活動をする人なら全然視野に入れるべき選択肢だと思います。
AxeI/Oを外で使うとなると、ノートパソコンもセットになるので!
ちなみにHXSTompには、数段階のインプットインピーダンス設定が存在するので
Ztoneに近い調整もできる。(しかもプリセット保存できる……)
4.他のギタリスト向けオーディオインターフェースと比べる
AudientSono::https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/262518/
僕の知っているギタリスト向けのオーディオインターフェースって、
AxeI/OとこのAudientのSonoくらいですね!(あとさっきあげたZoomのGCE3も?)
というか、このAudientSonoこそが、僕がAxe I/Oを買う時に最後まで迷ったデバイスです。
これ、めちゃくちゃ高機能で
・スタンドアロン(PC未接続)でプリアンプ・パワーアンプシミュ・キャビシミュの機能あり
・リアンプ機能あり
・真空管プリアンプ内蔵!
と嬉しいことだらけのデバイスですが
・inst入力は必ず真空管プリアンプを経由する(OFFにできない)
・キャビシミュは外部IRデータの読み込みができない
ということで、全部Sonoありきの音作りになってしまうという仕様になっており、
僕はDTM全体でのAmplitubeの有用性や、FETプリアンプのON,OFF可能という部分の安心感をとって
Axe I/Oを選びました。
ただ、今あらためて見てもADATでのch拡張とか
やっぱり音質に定評のあるAudient製の真空管搭載のプリアンプをMicインにも使えるとか
すごく面白いデバイスで心惹かれますね。
デザインもおしゃれで、非常に魅力的なデバイスです。
すでにお気に入りのオーディオインターフェースを持っている人が
ギター向けのオーディオインターフェースを探しているとかであれば、Sonoの方が面白いかもしれません。
結論、Axe I/Oってどうなの?
ギタリスト向けのオーディオインターフェースとしては、傑作と言っていいと思う。
わかりづらい専用ソフトでのDSP処理アンプシミュとかに逃げずに、
PC用ソフトのAmplitubeというところで、ギターアンプシミュとしての音自体は定評があり
それにマッチするように作っている本体なので、ギタリストにとって不都合らしい不都合はないのかなと思います。
その分だけ、DSP内蔵のインターフェースよりも本体価格も安く済んでいますしね。
ただ、マルチエフェクターのアンプシミュの音質が上がり、
オーディオインターフェース機能も充実してきた今となっては、
発売当時に比べるとAxeI/Oでできることのメリットは大きくないのかもしれない。
自分の音に欠かすことのできないアナログ機材を持ってるギタリストは、
リアンプ機能のあるAudientSonoと比較して気に入った方を買え!
ちなみに、僕は最近OrangeのOR15を買ったので
リアンプ機能が大活躍してます。リアンプ超楽しい。
他人が弾いてるアンプのつまみをいじる感じ。楽しいぞ。