ラウドネスノーマライズとの付き合い方

DTMなり音楽をやっていると耳にしたことあると思う

「ラウドネスノーマライズ」

という処理について。

先に僕の結論を言ってしまうと
そんなものは気にしなくていいからとにかく良いと思えるものを作れ
ってことなんだけど

そうなるに至った経緯を、なるべくさっぱりと説明して見ようと思う。

めずらしく、真面目な音楽制作の話です。

そもそもラウドネスってなんなの?

バンドの話じゃないです。

理解するのは難しいし、僕だって完全に理解したと言うには甘々な解釈だけど

大事なのは
・ラウドネス
・ピーク
・音量
の3つを整理して捉えることだと思うので、それぞれ簡単に説明します。

・音量

並べた順番と逆ですが、一番わかり易い音量からですね。
音っていうのはいわゆる空気の振動なので、振幅と周波数があるんですよ。

っていう説明がすでにわからない場合は中学物理をもう一度勉強し直してきてください。
「音波と振動」でグーグル先生に聞いてきてください。

周波数というのは音でも共通の用語として使いますね。440Hzとか。音の高さと周波数というのは相関の関係にあります。

じゃあ、振幅ってなんなのかというと
そう、音量です。

空気がより大きく動けば、大きな音に聞こえます。

それだけです。

と、言いたいのですがこの後の説明のためにもう少しだけ補足していきます。

イマドキの音楽再生機器は基本的に電気信号でスピーカーなりヘッドホンなりを
振動させることで音を再生させます。

つまり、ざっくりいうと電気信号の強弱≒音量ということですね。

一応、物理にもう少し詳しい人向けにきちんと定義するとすれば
電気信号の強弱=スピーカーの振動板の変位量となります
(何が違うのかわからんって人は無視してください)

 

・ピーク(ピーク値)

次にピークの説明ですが
振幅=音量≒電気信号の強弱 ということをここまでで説明しましたが

MP3とかWAVといった、データとしての音声ファイルというのは
その電気信号の強弱を記録することで、同じ音を繰り返して再生することが出来るようになってます。

時間軸を横にとり、電気信号の強弱を縦軸に取ったものを図示すると
振動なので波形となります。

よくDAWとかでみるやつですね。

ピークというのは、その波形の山の頂上のことです。
つまり、その山の波形のてっぺん、一番信号が強いタイミングのことをピークといいます。

いろいろすっ飛ばしてまとめると
ピークが一番電気信号が強いところ≒一番音量が大きいところがピーク
ということですね。

・ラウドネス・音圧

本題。ラウドネスです。
これは、人間が聞いた感じの音量感のことです。

音量と何が違うんだよ!って話になるのでポイントを2つだけ上げると

・人間は短い時間の音量変化を正確に感じ取ることが出来ない
・人間の感じ取れる音量は周波数によってかわる

というところで、物理的な音量と
人間の感じる音量感、つまりラウドネス微妙に異なるということになります。

ピークなどと違い、このラウドネスについては
様々な計算方法があるため、一意に定義できない事がまた問題をややこしくします。

ただ、それも踏まえた上ですっごくわかりやすく言うと

・短い時間の音量の大小ではなく、一定の期間の音量の平均値を考える
・人間の感じやすい周波数は音量は大きく、感じにくい周波数は小さく考える

の2点を基本として、その期間や感じやすさの係数によっていろんな計算方法がある、という感じに理解しとけば問題ないと思います。

大事なのは
物理的には音量≠ラウドネスではあるが、
人間の感性的にはラウドネスこそが本来の意味での音の量、つまり音量のように感じられるということ。

ラウドネスが上がると何が良いのか

再生機器にもよりますが、人間の耳って結構馬鹿なので
音量が大きいほどいろんな音が聞き取れるようになって、結果的に”いい音”に聞こえます。

もちろん、耳が痛くならないレベルでの話ですが。

なので、作る側としては少しでも音量を上げてもらったほうが嬉しいわけです。
だけど、音楽聞く場合ってだいたい他のアーティストの曲とランダム再生だったり、ラジオならリクエスト次第で全然関係ないアーティストの次に再生されたりしますよね。

そうすると、基本的にリスナーは前の曲が再生されたときの音量で聞くことになるのです。
となると、前の曲より曲そのものの音量が大きいほうがいい音で聞いてもらえるということになります。
もちろん、みんなそう考えるので、単純な音量としては基本的には音が壊れないギリギリ、つまりピークが枠をはみ出さないギリギリを攻めてくるわけです。

そこで頭のいいやつが考えたわけです。
音量感を上げれば、他の曲より大きな音に感じてもらえるんじゃないか。

一番わかり易いやり方は、不自然にならない程度にピーク部分を潰すことで隙間を作り、
その隙間分だけ全体の音量を上げてしまうという手法。
つまり、コンプで潰して音圧を上げるってやつです。

結果的に、それは正解で
いわゆるラウドネスウォーと呼ばれる音圧上げたもん勝ちという時代がしばらく続きます。

ラウドネスを(無理やり)上げると何が良くないのか

自然にラウドネスを上げる分には問題ないですね。

ラウドネスを上げる、つまり音を詰め込む方法はいくつか合って
その内の自然な方法というのは

空いている隙間に入りそうな音を増やすことです。
具体的な例を上げると、低音があいてるならベースを足すということです。

一方で、不自然なラウドネスの上げ方とは何かというと
エフェクトで音を加工して、潰したり隙間を作ったりするということです。

まぁもちろん、自然に感じられる範囲であればプラスな作業ではあるのですが、
音圧だけを至上目的とした場合は、各楽器の自然さなんてゴミのように扱われます。

目立つ音だけは輪郭が残り、それ以外の音はただ音を埋める要因に成り下がる
そんな状態になってしまいます。

一概に悪いと言い切れないのは、目立つ音はなんとなく輪郭が残った上で音量感が上がるということですね。
テレビやラジオなど、1回聞いただけでフレーズを覚えて欲しいような場合は
その目立つ音が十分に伝わった上で、音量が大きければそれで嬉しいわけですから。

音圧を上げれば、曲を覚えてもらえる!売上のためには音圧を上げる!
売れてる曲はいい曲だ!
そんないろんな思惑が飛び交い、
いつしか「いかに音楽的な要素を保ったまま音圧を上げられるか」という競争のような状態になりました。
俗に言うラウドネスウォー、音圧戦争というやつですね。

ただまぁ、必ずしも音圧至上主義=悪というわけでもなく、
むしろ、聞いてもらってCDを買ってもらうということは、作る方に関わる人にとっては正義でもありました。

ラウドネスノーマライズのはじまり

ipod、Walkmanが流行り
音楽をたくさん聞けるようになってくると、何人かは気づき始めました。

「曲によって音量感がバラバラだと曲ごとに音量調節しないといけなくて面倒」

こうしていつしか携帯プレーヤには「自動音量調節」と呼ばれるような機能が付きました。

これが、ラウドネスノーマライズの始まりです。
複数の曲で比べたときにラウドネス、つまり音量感が一定になるようにすることでユーザーが快適に音楽を聞けるようになる仕組みです。

カタカナで用語っぽく言われるから分かりづらいだけで
実際にやっていることは、音量バーをいい感じに調整しているだけです。

もともとはそうしたソフトウェア側の便利機能だったんですが
サブスクリプションサービスなどで、配信側が有無を言わさずやるようになったことで
一気に界隈でも話題に上がるようになりました。

ラウドネスノーマライズへの偏見

音楽制作をしていると、

ラウドネスが上げる、音圧を上げる≒コンプを掛ける

という、まあ間違いではないんだがそれだけではないんだぞ
と言いたくなるような公式を誰もが一度は通ると思います。

この公式だけを真面目な人が信じてしまうと

ラウドネスというのはコンプレッサーで調整するものなんだ、という勘違いが起こります。

その勘違いのまま、”ラウドネスノーマライズ”という単語を聞くと

「ラウドネスを均一にする……?基準を超える全ての音源にコンプをかけるってことか!」

という勘違いが起こるのは想像に難く有りません。

すると、なぜだか良くわかりませんが
ラウドネスの基準値を越えないギリギリの音圧を求め始めるのです。

勘違いだと思ったら、ほんとうにそんなことをしているサービスも合ったりしたかもしれないですが……

製作者はラウドネスノーマライズとどう付き合うべきか

結論は最初に言いました。

気にするな。自分の格好いいと思った音を作れ。

ということです。

結局やっていることは、ユーザーの音量調節の代わりでしかないので
能動的に音質を変えたりとかそういうことをしているわけでは有りません。
(中にはそういうサービスもあるのかもだけど、そんなサービスが生き残れるほどのブルーオーシャンではない……)

コンプで潰すことによるメリットは音圧の上昇だけじゃなくて、
全体のまとまり感が上がるとか言うメリットがあるので、コンプ≒悪だなんて思う必要もないですね。

ただ、まぁ
音圧を上げることでなんとなく格好良く聞かせるというハッタリが効かなくなったということは
頭の隅に入れた上で制作をしたほうが良いのかもしれません。

ラウドネスノーマライズの無い環境、つまりCD音源をそのままプレーヤーで再生する場合などは
今まで通りのハッタリも効くので、その環境をターゲットにして音源を作るのも一つの選択肢だと思います。

 

まぁ、一つの見方として

音圧を上げるテクニックとかは、音楽的感性とかではなく、もはやノウハウの塊だと思うので
そういう意味ではアマチュアがプロに適う要素ではないと思っていますが

ミックスの良し悪しというのはその人のセンスによる部分も大きいと思うので
音圧戦争から開放されるというのは、歴戦のプロと近い位置でアマチュアが戦えるような環境になったのかな
とも思います。

 


 

という偉そうな文章なんて書いてないで、もっと真面目にミックスの勉強をしろ、と言われそうですが
僕が色々見てきた中でのラウドネスノーマライズに対する見解はこんな感じです。

本当はところどころ図とか入れたらもっと見やすくなっていい記事になるんだろうけど
そういうわかりやすいサイトはごまんとあるはずなので、ここでは僕なりの理解と雰囲気を書き残せればいい、という建前を画像準備するのが面倒くさいという言い訳にしたいと思います。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA